遺言がある場合、原則として遺産はその遺言に従って分配されます。
しかし、遺言と異なる遺産分割協議を行うことは可能です。ただし、いくつか注意すべき点があります。
遺言と異なる遺産分割協議が可能となる条件
被相続人が遺産分割を禁じていないこと
遺言は被相続人の最後の意思表示であり、相続では非常に強い効力があります。
相続人は遺言を最大限尊重しなければならないため、遺言者が遺産分割を禁じている場合(民法908条)、相続人はその意思に従い、すぐには遺産分割はできません(民法907条)。
相続人全員が遺言の内容を知った上で、これと異なる分割を行うことについて同意していること
被相続人の財産処分については、遺贈の放棄が認められていますが、遺産分割の方法や相続分を指定した遺言についても、遺言により利益を受ける者やその他の相続人全員の同意があれば、遺言と異なる遺産分割をすることができ、遺言は変更されることになります。
相続人以外の人が受遺者である場合には、その受遺者が同意していること
相続人以外の受遺者の同意というのは、遺贈を受ける人(受遺者)が遺贈の権利を放棄する意思表示をしているということです。
受贈者が遺贈の放棄をすれば、財産は遡って相続人のものとなるので、遺言と異なる遺産分割協議をすることは可能です。
遺言執行者がいる場合には、遺言執行を妨げないか、もしくは、遺言執行者の同意があること
遺言執行者は、遺言の執行に関する行為について権利義務を有しており、相続人はその執行を妨げる行為ができません。
相続人全員の同意のもとに遺言内容と異なる財産処分を相続人から求められても、遺言執行者は遺言に基づいた執行をすることができます。
また、遺言執行者があるにもかかわらず、一部の相続人が遺言に反して遺産を処分してもその行為は無効とする判例もありますので、遺言執行者がある場合は、遺言内容と異なる遺産分割協議や調停を行うときは遺言執行者を加えたうえで成立させる必要があるといえます。
遺言と異なる遺産分割協議と登記
遺産分割の指定をしている遺言の場合
例えば、「A不動産は長男に相続させる」という遺言があり、相続人である長男と次男が話し合って、A不動産を次男名義にする場合。
A不動産は、被相続人の死亡の瞬間から、所有権権がAに移転し、長男のものになっています。
その後の話し合いで別の相続人が取得することは相続人間の「贈与」もしくは「交換」と解釈されます。
そのため、登記をするには、まず、長男に「相続」を原因とする所有権移転登記を行い、その後、二男に「交換」または「贈与」を原因とする所有権移転登記をするという二段階の登記手続きが必要になります。
相続分の指定をしている遺言の場合
例えば、相続人が長男と二男の2人であった場合に、「相続割合を長男は3分の2、二男は3分の1とする」というように、被相続人が、法定相続分とは異なった「相続分の割合」を決めている遺言を「相続分の指定」をしている遺言といいます。
この場合には、遺言と異なる遺産分割協議書によって、被相続人から不動産を取得した相続人への相続を原因とする所有権移転登記を直接行うことができます。
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